「NHKのど自慢」を味わう

NHKのど自慢」についてです。
このまま背を向け続けることはできません。

いつも、見るとはなしに見てしまった時は、ほとんど百発百中の勢いで釘付けにされるくせに、それを「オモシロイ」と評することはありませんでした。それどころか「見てはいけないもの」を見てしまったような後ろめたさすら覚えていたのです。
その妙な感じの正体を突き止めるべく、ここ2ヶ月ほど「NHKのど自慢」を録画して観察してみました。
暇人ではありません。

さて、
「NHKのど自慢」ですが、今さらいうまでもなく、「素人がテレビで歌の上手さを競う」という超ベーシックな内容の番組で、1946年に前身番組「のど自慢素人音楽会」としてスタートし、1970年には現在の「NHKのど自慢」となったのだとか。
ほとんど幻であるかのような気がしますが、今でもちゃんと実在しています。
歌が上手ければ「ドシラソドシラソドーミーレー」と鐘が鳴り、下手であれば鐘が1つ2つしかならないという形態は、直接この番組を見ようが見まいがコンセンサスは得てると言っていいでしょう。

放送は日曜日のお昼12時15分から45分間。
ラジオでもやっています。
地方の公民館みたいなところでの公開放送で、基本的に再放送はありません。
出場できるのは「15歳以上のアマチュア(除中学生)」ということだけが制限ですが、地方巡業という形をとっているので、やはりその地元出身ということも条件だと思われます。
そして出場できるのは、毎回20組。
NHKの宮本隆治アナの司会のもと、出場者はステージ後方の溜まり席から順繰り出てきて、のどを自慢していくわけです。
あとは、ゲスト審査員2組の歌手が、ところどころコメントしたりアドバイスしたりしつつ進行していきます。
ちなみに、出場者の中には、このゲスト歌手の持ち歌を歌う人が必ずと言っていいほど出現します。

この番組の旨味は、前述のとおり、鐘によって歌唱力をジャッジメントするところにあります。
番組中では、鐘が全部鳴る場合を「合格」、1つ2つの場合は「残念」とされていて、出場者は無邪気なくらいまっすぐにその「合格」という境地を目指します。
合否の審査はNHKだけに結構ユルいのではないかとも思っていたのですが、実際はわりとシビアであり、ミステリアスでもあります。
番組の終盤には必ず「鐘・秋山気清」と紹介されるオジサンがいるのですが、この人はあくまで鐘を鳴らす役割で、審査員ではありません。ヘッドフォンからの指示に従っているようです。

仮装大賞的ノリなグループ系なんかは、「カーン」とやられることでズッコケてみたり、ある意味でお約束となっています。決して合格することのない賑やかしですね。これは出場者全員が入場してきた瞬間から判別できます。

しかし、見どころなのはそうではない場合。
要するに、わりと真面目に合格を狙っている人や、本当に勝負として出場してきている気配の人、または頑張って歌っているお年寄りなど、テレビ的にも合格させがちな人たちに対しても、「歌がうまくない」と判断するや遠慮なく「カーン」とやってしまう場面。
これは時に残酷でもあり、時に爽快でもあります。

そしてそうやって生まれる合格者は1回の放送で大体5、6人なのですが、最後の最後にはその中でさらに1人がその日のチャンピオンとして選ばれ、讚えられるようになっています。
そうなると皆「かなり」喜びます。
泣く人も少なくありません。

妙に厳格さを感じさせるのは、簡単には出場者に名乗らせないところ。
出場者は自分の歌う番になると、
「3番、地上の星」、
「8番、LOVEマシーン」、
「15番、まつり」、のように、番号と曲名しか言わないのです。
そして、歌った歌の評価が「合格」の場合、つまり金が全部鳴った時にはじめて名前を聞いてくれるようになっているのです。
どんなに印象的な人でも、どこから来た誰なのかは名乗るチャンスはありません。
さんざん四方山話は聞いてくれるのですが、名前だけは言う機会を与えられないのです。

さて、番組のプログラムは以上のような感じなのですが、ボクが「釘付け」にさせられるのは、実はその出場者たちの異彩の方なのです。
とにかくウソのように個性のある老若男女が出てきます。
そして、ひたすら明るく、元気。
そのハツラツ過多にはめまいすら覚えます。

職業も多種多様で、それもかなりわかりやすく記号化されて登場します。寿司屋なら寿司屋の格好、森林伐採の仕事なら森林伐採業務の格好、看護師は看護師の格好、空手をやっていれば空手着、草野球やっていればユニホーム、といった具合です。
しかしそうやって、バラバラな個性でありながらも、あのステージ上では不思議なほど「NHKのど自慢な人たち」というトーンに収まります。あぁ先週もこんな感じの人いたなぁって思うことが度々。
なんか、「笑っていいとも」の客席の感じが毎日同じなのと似ているかもしれません。

そしてさらに驚かされるのは、やはりその歌いっぷりです。
ウマイだヘタだいう以前に、出場者誰もが「しっかりと酔って歌えている」のです。
本当に「聴かせよう」「魅せよう」としているフシがあります。
見ているこちらは赤面に近い状態にさせられるのですが、当の本人は全くその感じはありません。

そして不気味なことに、
1人誰かが熱唱している際は、後ろの溜まり席の他の出場者たちは一斉に振り付け応援がはじまるのです。
しっとりした歌なら体をゆっくり左右に揺らし、激しい歌ならばそれに見合った独自の振りをします。
とにかくどんな曲にもノリノリ。
そして歌い終わった人が戻ってくると、抱き合ったり、ハイタッチしたり。
「よくやった!!」「最高!!」「オマエも頑張れ!!」...そんな会話が聞こえてきそうです。
この現象が毎週ですから、この世にいかにこういう傾向をはらんだまま生きている人が多いということがわかります。

ふと気づいたことなのですが、
出場メンバーの中で、特に扮装してこない人、つまり仕事着も趣味着もなく、かといってドレッシーな装いもしていない人たち。この人たちの格好があまりに普段着であることが多いのです。
全国放送であるというのに、少しダラシナイくらいの格好の人もたくさんいます。
ホント、近所でカラオケ大会やっているからちょっと出てみようかって感じ。
つまり、それくらいテレビ中継なんて意識がないのではないでしょうか。
対象はあくまで公民館に詰めかけたお客さんだけで、それをたまたま全国放送しているという仕組みなのかもしれません。
そのプライベートイベントを覗き見しているような感じがどこか「見てはいけないもの」のような気にさせていたのではないかと思うのです。

今、 日本人は、NHKのど自慢に出たことがある人とない人に二分されます。
もちろん出たことある人は圧倒的に少数です。
しかし、毎週毎週確実に増殖し続けているのです。
これはカジュアルを装う徴兵制度なのです。
もし自分の街に「のど自慢」がやってきて、どこか知人のルートで「出てみない?」となって、オモシロ半分で会場まで足を運び予選に参加する。そして気がついたら生本番で一曲歌わされ、踊らされている、なんて可能性はゼロではないのです。
せめて、いつ「向こう」に連れて行かれても、最低限「自分」を守り続ける為に、
普段から歌う歌くらいは決めておくべきなのではないでしょうか。

コメント(15)

画面の切り抜き加減が絶妙すぎますw

NHKの理想とする参加型視聴者ってコレなんでしょうか。
ちょっと某国っぽくて寒気がします。

kyo | 2006年7月31日 18:44 |返信

何を歌おうか迷っています。

tsuru | 2006年8月 1日 00:50 |返信

ちなみに、
エントリー内の写真の人たちは、
ピンクの二人組→UFO
空手着の女性→北斗の拳の歌(ショークッに合わせて上段蹴り)
グローブした男→TMレボリューションの歌
ジャケットの男→米米「君がいるだけで」
でした。

参考にしてください。
ボクは今「哀愁のカサブランカ」を検討しています。

yone | 2006年8月 1日 20:50 |返信

!!空手着は女性かッ!!

・・足の裏が真っ黒だよ、ねえさん・・・

kyo | 2006年8月 1日 21:54 |返信

予選はいろんな意味で厳選されてるみたいですよー
唄っていない参加者の応援振り付けは少なくとも20年前はなかったような記憶があるんですけど・・・(古)
「水戸黄門」的なステージ構成に安心感があるのでしょうか。

washi | 2006年8月 2日 01:50 |返信

一度くらいは生観覧してみたいですよ。
しかしなかなか近くに来ないんですよねぇ。
http://www.nhk.or.jp/event/prog/nodojiman2006.html

yone | 2006年8月 2日 09:36 |返信

目のつけどころが良いですね~。

のど自慢をちょっと見てみたくなりました。

オリバー | 2006年8月 3日 22:20 |返信

昔は何とはなしに時間になるとチャンネルをまわし
皆まじめに聞いてる訳ではないのに
「これキンコンカンコンだよ」だの
「カーン」だの「これは2個だね」だの
「この人なんで上手いのにダメだったんだろう」等々
ほのぼの家族な会話をしてた時代を思い出しました
懐かしい!!!
‥昔はだいたい毎週定番bンてたよなぁ
また見てみよ〜

ナル | 2006年8月 3日 23:17 |返信

上手くても、オリジナルの歌い手の雰囲気(モノマネ)が感じられると、ダメになること多いですね。

余談ですが、
上手い女の人は、ドリカム、一青窈、夏川りみ、あたりを選ぶ傾向があります。

yone | 2006年8月 4日 10:04 |返信

最近まったく見てないです。

私が大学行ってた時、同じクラスの子が、なんとこの『NHKのど自慢』出たんですよ!
歌のとても上手い子で、予想通り合格でしたけど、チャンピオンにはなれませんでした。
題名が思い出せないけど堀ちえみの歌で、ノリノリの振り付けで踊って歌っていました。

はる | 2006年8月 4日 16:41 |返信

知人が出たっていう話は初めてです。
ちょっと羨しい。

yone | 2006年8月 5日 11:03 |返信

「秋山気清」のオジサンゎ、私の祖父です☆
最近ゎ毎週観ています♪「そして鐘、秋山気清、・・・」になると、興奮してテレビに向かって手を振ってます。

れいな | 2006年8月30日 18:16 |返信

わぁ、凄い!!
毎週毎週地方ですから大変そうですね。
お体気をつけて、ずっとずっと鳴らし続けてくれることを願ってます。

それにしても、「鐘鳴らしDNA」は自慢ですね。
携帯着メロは「のど自慢」のオープニング曲ですか。

yone | 2006年8月30日 22:48 |返信

秋山気清さんの詳しいプロフィールが知りたいです
誰か教えてください

かずくん | 2006年12月 4日 12:22 |返信

ネット検索で知ることのできるレベルしかボクにはわかりませんねぇ。
お役に立てずスミマセン。

yone | 2006年12月 6日 01:07 |返信

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