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タヒチ漫遊記・13 「水中排便のすべて」

もう、こんなに屈託のない青い海は今後の人生では見られないかもしれない。
そう思いつつ眺めていると、心の奥の方から、切ないほどの感動波が湧き出てきます。そしてそれは、体じゅうをザワザワさせるほどのウネリとなり、ついにはボクの腸をも活性化させてしまったのです。

あぁ、ここで脱糞したい。

それは非常に素直な欲望でした。
しかし、大人が海でウンコをしてしまう為には幾つか乗り越えなくてはならないことがあります。

ちょこっとコーコク

まずは環境汚染の部分。
100人の人に「この世で一番汚い物体ってなぁに?」と問うてみたのなら、下手すると80人くらいの人が深く考えることなく「ウンコかな」と答えるのではないでしょうか。きれいなウンコなどないという意味からしても、絶対的な汚の王様ではないかと思うのです。無論もし、この世の汚いものを並べて化学的に比較したならば、もっと汚レベルが高いものもあるのは想像できるのですが、「汚い」を象徴化するならば、それはやっぱり「ウンコである」と言い切ってしまっても良いでしょう。
それを海洋投棄しようとしているのです。
人として許されるものではありません。

出発前から脱糞願望があったので、現地でこんな葛藤が起ることはわかっていました。
自分自身を納得させておく為に、調査は怠っていません。
ネット検索で人糞の分解についての幾つかの報告意見を目にしてみると、いくつか安心材料をみつけられます。
その昔は人糞は貴重の肥料であり、農作物へ利用していたのは当たり前として、養殖池に投棄して魚のエサにしていた地域ですらもあるとのこと。さらに、単なる屎尿処理という意味合いで海に捨てているというのは、どうも我が日本にも当てはまる(った?)話なのだということ。

つまり、ボクのささやかな一本は、元気な魚や微生物がパクパクと食べてくれると考えておいてよさそうなのです。
それくらいではグレートブルーは濁りません。
そう信じることにしました。

次に、人的被害への配慮です。
ビーチで水遊びしている人、またはシュノーケルに興じている人たちの視野の中に流れついてはいけません。
それは想像するだけで痛ましい惨事です。
見ず知らずの東洋人の排泄物を目撃もしくは直撃となれば、楽しいバケーションも一気にトーンダウンさせてしまいます。
幸い、そういう意味では、その時はチャンスでした。
ビーチの方にいるのは、1組のカップル、中学生くらいの姉妹っぽい2人、そして1人きりで泳ぐオッサン、の計5人だけが確認できる程度です。
その人たちからも離れたところで放出すると良さそうです。

さて、次に思ったのが、
そもそも水中で脱糞ってできるものなのかという点です。
大人の排泄弁というものは、反射的に閉じてしまっているものです。
「ここでは出してはいけない」という思い込みを超えるのには、相当の信念が必要です。海中放尿の経験からして、小ですら一瞬の「ためらい」があるのに、固形物を産み落とそうとしているわけですから。
加えて、水圧の問題なども生じてくるかもしれません。
果たして簡単に出せるものなのか。
こればかりはやってみるまでわかりません。

そして最後は、「徳」の部分。
「ボラボラの美しい海でウンコをしてきた人」になっていいのか。
それを一生背負って生きていけるのか。
便を海中で放つということは、大きな便器の中で泳いでいるのと意味は変わりません。そして当たり前に直面する問題としては、排泄成功後も「お尻を拭けない」のだということ。裸のままパクパクと平泳ぎでもするしかありません。
考えれば考えるほど、いろいろなものを喪失するような気がしていました。

ボクは大きな迷いを抱えつつも、とりあえず一人で海に入りました。
そして、ビーチで遊ぶ人たちから適当に距離を置き、なおかつ、一番積極的にエサに手を出す魚の群れがいるところを選びました。つまり、比較的「いやしい魚」をターゲットとしたのです。このあたりではシマシマの魚となります。

それでも正直なところ、まだ迷っていたのです。
ホントにしていいのか、ホントにしていいのか、繰り返し頭の中で自問します。

しかし、ほんの数十秒後、ボクはそれまでの迷いがウソのように海パンを脱ぎはじめていました。
いや、別に整理がついたわけではありません。
普通にしたくなってしまったのです。
生理現象のキワに立たされ、分別などはどこかへ消えてしまいました。
少し慌てて脱衣しているくらいです。

そしてボクは全裸でボラボラの海を感じつつ決心を固めたのです。
もう出すしかない。
もう出すしかない。

体を少しくの字に折りながら、足を軽く開き、手だけは平泳ぎのようにしています。

波動砲、よぉい・・・・

ていっ!!

で、出た。
意外とすんなり出た。
今、海中に放っています。
なんとエモーショナルな瞬間でしょう。
分娩という感じすらします。

そして産まれたたてのそれは、ユラユラとさまよいつつ、ゆっくり沈んでいきました。
重いようです。

そうやって禁断の水中排便に成功したわけですが、
あろうことか、それだけでは便意は収まりません
迷わず続いて、もう一本。

二本目を放つ時には、沈みゆく一本目の姿が見えます。
ボクはそれから逃げるようにしながら観察を続けたのですが、
そのファーストチルドレンは、通常ボクが便器で対面するそれに比べ、非常に色鮮やかでした。
「黄金(こがね)色」という表現が適当でしょうか。
海や空が青く美しいように、ここタヒチでは便ですら違ってみえるのです。

ボクはもう完全に調子に乗ってしまい、気がつくと三本目も絞り出していました。
自分でもこんなにしてしまうとは思ってもみません。

ところが、この直後に危険に見舞われます。
潮の流れのせいか、
「できるだけ早く便を断ち切り、その場から泳いで逃げたい」という心理のせいか、
水中での姿勢が非常に不安定になってしまいました。
そしてその影響下で放たれた三本目は、発進するなり、まっしぐらにボクに向かってくるのです。
ヤバイ!!

ボクはもう慌てふためきながら、身をよじります。
もし、その光景を第三者が目撃していたら、まさにマトリックスのようであったに違いありません。

間一髪のところで激突回避できたわけですが、ピンチはまだ終わってません。
なんとサードチルドレン、ビーチ方面の人のいる方へふわふわと流れはじめてるではありませんか。
最初の二本とは重さが違うようで、なかなか沈まないのです。
これまた、ヤバイ!!
た、頼む、沈んでくれ!!

これは本気でアブラ汗状態です。
ビーチの方で楽しんでいる若者が、あの黄金色の物体を見たら、それがナマコなどとは違うものであることは容易に判別されます。

するとその時、
一匹のシマシマの魚が、漂うサードチルドレンに近づいていきます。
ボクは真剣に祈りました。
食え、食ってくれ!!

思えば、当初の最大の希望は、自分の排泄物に魚を集めることでした。
くしくもこの瞬間、魚はその黄金の人糞に反応を示し、そして寄ってきたのです。

く、食うのか!?

次の瞬間、巨大な失望がボクを襲います。
なんと、界隈で一番いやしく生息していたシマシマの魚が、ボクのサードチルドレンに顔を持っていきながら、
プイと鼻先ではじいたのです。
こんなの食わんよと言わんばかりの冷たさです。
そして、スイスイとどこかへ泳いで行ってしまいました。

しかし、魚のワンプッシュからの反動のおかげか、サードチルドレンは先ほどまでの浮遊の姿勢とかわり、ユラユラユラユラと時間をかけて地に降り立っていったのです。

よかった・・・本当によかった。

ボクはもう大きく何度もうなずくことしかできませんでした。

というわけで、これだけ長々と書いておきながら、「魚が寄ってきてパクパク食べたんです」という大オチも用意できていなかったのでした。本当に残念でなりません。期待させてしまった方、申し訳ありません。魚たちは集まってきませんでした。無視されたと言ってもいいでしょう。

後で思ったことですが、ボクはタヒチに到着してからというもの、ほとんど魚類ばかりを口にしていました。そのあたりが原因だったのかもしれません。いや、是非ともそう思いたいものです。
色だって艶だって良かったのですから。

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コメント(8)

サードチルドレンが漂いだすあたり
とってもドキドキ読みました。無事着地良かったです。
まだ水中排便は経験した事ないですけど
美しい海だとスル〜っと産まれるんですね。
3本は予想外でした!

ナル | 2006年4月28日 02:57 |返信

はらはらしながら読みました。しましまの魚の表現あたりがリアルにあの美しい海を思い出させました…。読んだ後の旅行じゃなくてよかったのかもしれません。コーラルガーデンできっとyoneさんのことばかり考えてしまったことでしょう。 あ〜おもしろかったです。

MM | 2006年4月28日 09:55 |返信

分娩…笑いました。汚物を聖なるものに例えてしまう意外性に。

添付画像無いのに臨場感が出ていて楽しく読めました。
僕まで食ってくれ!と念じてしまいましたよ。

リキッドチルドレンでなくてよかった…

オリバー | 2006年4月28日 23:00 |返信

まるで一本の短編映画を見るようでした。
読みながらおなかを抱えていたのは言うまでもありません。
偉業を成し遂げたyoneさんに拍手〜〜〜
>オリバーさん
リキッドチルドレンでなくて本当によかったですね(笑)

washi | 2006年4月29日 13:46 |返信

ヾ(>▽<)o

ウケましたよ。

ton | 2006年4月29日 19:51 |返信

みなさん、ありがとうございます。
もっと引かれると思ってました。

しかし。リキッド出したら逃げ場ないですよ。
考えただけでも恐ろしい。

yone | 2006年4月30日 14:18 |返信

おひさです〜〜
大変遅いコメントで申し訳ありませんが、久々に来て以前に気になってた話題発見♪ということでしっかり読ませていただきました。
これはスゴイ!かなり笑えました。
引くどころか、こういう体験というのはものすごく貴重だな〜と思いましたよ。

あやな | 2006年5月24日 22:06 |返信

あやなさんもその気になれば出来ますよ。

yone | 2006年5月25日 18:01 |返信

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