私は観た!「ワークメン」

『奇跡の激突、スタローンvsシュワルツェネッガー あなたの恨みはらします』
というキャッチコピーでお馴染の「ワークメン」を早速観てきた。
ネタバレも含まれているので、これから観る方は注意されたし。


【あらすじ】
シェリーはニューヨーク郊外で両親と静かな生活を送る女子大生。ある夜、シェリーの家に3人組の強盗が入る。シェリーは隠れ逃げつつ、離れて暮らしていた兄ロバートに電話で助けを求めるが、ロバートが到着した時には、両親は殺されてしまう。
後日、ロバートはインターネットで復讐請負人のサイトがあることを知る。恨み事に対して金銭報酬に応じた復讐を請け負ってくれるのだ。ロバートは、1番安く見積もってくれた請負人ジェイド(シュワルツェネッガー)とチャットする機会を得る。ジェイドは請け負ってもよいが、本当に恨みは自分の中で消せないものかと説得をはじめる。
そんなある日、ロバートは仕事先で、シェリーが親殺しを目撃した際、犯人の一人の腕にあったという特徴的な入れ墨をした男を発見する。ロバートはその男の写真を撮り、シェリーに確認してみると、間違いないことが判明する。
その夜、ロバートはジェイドにターゲットを告げ、恨みをはらしてくれと頼む。しかしジェイドは警察へ申し出ることを勧めるだけで請け負ってはくれない。
翌日、路地裏で入れ墨の男が殺されているのが発見される。ロバートはすぐさまジェイドにお礼の連絡をするが、ジェイドは知らないと答える。
さらに数日後、強盗団の仲間と思われる男が死体になって見つかると、その殺しの手口から同業の請負人アンドリュー(スタローン)であることを知る。シェリーが雇ったのだった。
表の顔が警察官であるジェイドは次第にこの事件のことを調べはじめる。すると、強盗団の生き残りの1人がロバート、シェリーの父親の弟ハリー、つまりは伯父にあたる人物だとわかる。ジェイドは警察の顔として、ハリーの検挙に動く。しかし同時にアンドリューはハリーを殺しに向かう。
しかしその時、さらにもう一人の復讐請負人がハリーによって雇われていたことに気付くものはいない.........。

とりあえず、80年代後半から90年代くらいまでは「ハリウッドのアクションスター」といったら、スタローンとシュワルツェネッガーであることは誰も異論はないだろう。
この二人がレストラン『プラネットハリウッド』の共同出資者であることは有名であったが、スクリーンの中では、二人が並び立つというのは長らく夢のままという状態だった。
ジャッキー・チェンとジェット・リーの共演が実現した今、最後のゴジラvsガメラということだ。

監督は、新鋭ロイ・ビックハム。
一番有名なところでは、「カムカムサンデー」でのコミカルな演出なわけだが、「パーマは二度巻き」のような不条理モノを撮ったり、はたまたドキュメンタリータッチの「マンホール」と、とにかく器用なタイプのようだ。聞く所によると、日本のテレビドラマなどにも造詣が深いのだとか。確かに、ときおりその影響が見え隠れする。

さて、本編はじまっていきなり思うのは、「画面が薄暗い」こと。
演出としか言いようがないのだが、暗いのではなく黒いだけなので、一体何が起こっているのか、音と字幕だけが頼りになってしまった。これは終始である。

序盤に起こる両親殺しのシーンでのカメラワークは古典的ではあったが、臨場感は多いに伝わった。その後、「恨み」というものを継続させる為の凄惨さは少し足りないようにも思ったが、あれ以上やるとスプラッタに傾きかねない。ただ、あの状態で犯人達にバレずに電話できるものか。
一方、ラストの激突シーンは意外とあっさりしていて、暗がりというのもあり、せっかくの見せ場で何やってんのかよくわからない場面も多々。
惜しまれる。

ストーリーで少し疑問だったのは、
妹がコンタクトを取るアンドリュー(スタローン)は、「高額報酬が必要だが、払えばしっかり殺す」というような設定なのだが、兄の方はジェイド(シュワルツェネッガー)を選ぶ際に「安いから」だったところの違いの明確なアンサーが見つからなかった。恨みに対する金のかけ方の違いということだけでなく、なにゆえ大金を所持していたのかも不思議だ。あまりに普通の女子大生だし、ターゲットは3人もいたのだし。

その他にも、終盤で切れ者のはずのシェイドが逆に狙われていることに全く気付いてなかったり、兄殺しを思い立つハリーの背景は大雑把だったり、いくつか粗いところもあるにはあるが、全体的にはよく練られた脚本だったと思われる。むしろこの二人ではない方がスッキリと見られたかもしれない。スタローンの普段の仕事がイエローキャブの運転手というのは、見ていて窮屈だ。

また、これは誤解を招くかもしれないのだが、スタローンとシュワルツェネッガー両者とも「脱がない」のが気になった。衰えは当然なのだが、この二人、筋肉見せてナンボってところもあるのは事実。見たいか見たくないかは別として『自分が何を求められてそこに居るのか全く理解できていない』か、『理解はできているが、今は自分はこう見られたい』か、いずれかの表れという感じがして消化に悪い。

それと、設定上しかたがないことでもあるが、この二大マッチョスターが同じ画面内に収まるシーンが極めて少ないのも残念でもある。ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの「ヒート」ほどでもなかったが、とにかく絡みは少ない。
唯一印象的だったのは、駅での遭遇シーン。
駅員のおじさんが不自然な位に小柄だったのは、二人を大きく見せる為意図したものではないかろうか。

監督のインタビューで、「必殺仕事人へのオマージュ」と明言されているわけだから、要所要所そういった空気をトレースしているのは当然といえば当然。
正直ちょっとニヤリとさせられてしまったのは、シュワルツェネッガー演じるジェイドが、同業者の極秘リストファイルを調べている時、一瞬だけ「MONDO」という人物として藤田まことの顔写真が載ったページが出てきたところだ。
それと、ラストで登場したハリーに雇われた女性請負人(ジュリー・サワー演)の役名が「カヨ」であるところ。『なんでも屋のお加代』まで知っているとは。

さて、その仕事人ぽさ、それとなく漂う程度なら品も感じられるのだが、これが日本の宣伝会社の手にかかると、嬉しくて嬉しくておとなしくしてはいられないようだ。
実は本作の風味を一番殺しているのはこのあたりかもしれない。
コピーの「あなたの恨みはらします」はもそうだが、酷いのは邦題の付け方。
原題の「Clear from a grudge」から、「ワークメン」などというタイトルにしてしまうB級感覚がまかり通るという現実。
日本には似た名前のガテングッズのお店があることは知っているのだろうか。
今もうこんな事を書いてるそばから、私の頭の中では「やる気わくわくワークマン」の反復が止まらない。


コメントは「今月号専用BBS』へ

関連するエントリー


2008年2月号(2007年12月 6日 公開)
UP
BACK