富士山が待っているぞ!【後編】
8合目の山小屋「白雲荘」で束の間の休息をとったわけですが、この頃から少しだけ頭痛のようなものを感じていました。
ただ、そうは言っても、まだ本気でへこたれるほどでもなかったので、いよいよ出発の準備をはじめます。
時間にして深夜1時半。
残念なことに、外はザンザンに雨が降ってきてしまったので、カッパ類を身にまとっていないとタイヘンです。
持っていっていた一眼レフもリュックにしまうか迷ったのですが、よくよく思えばこれから山頂に向けてが楽しみな場所なわけですから、ビニールかけて引き続き首からぶら下げていきました。
首痛し。
ヘッドランプも付けた登山者の列は切れ目なく続いているので、闇のわりには意外と安心感があります。
山小屋も変わらずやっているので、深夜であることを忘れそうになります。
途中、とある山小屋のオヤジは
「今日は絶対ご来光は見えないぞ」
なんてこと言ってきました。
今シーズンはまだ3日くらいしか太陽が出てないのだとか。
しかし登るしかありません。
周囲が少しずつ明るくなり、雨もなんとなく小雨になってきました。
なんか有難そうな鳥居も登場してきす。
しかしコレ別にゴールでもなんでもありません。
さらに頑張って登っていくのですが、やはり相当な疲労と空気の薄さとで、ペースはイマイチ上がりません。
酸素の缶は1つしか持っていなかったので、ほとんどワイフに持たせっきりでした。
ここらへんにきて、結構酸欠気味になってきます。
いつのまにやら雨もすっかり止みました。
さきほどの山小屋のオヤジのセリフをあざ笑うが如く、周囲はどんどんと明るくなっていきます。
ボクが日々良い行いを繰り返していた証拠でしょうか。
そして、急速に夜明けが近づいていく中、もはや「ご来光を拝む」は夢ではなくなりました。
見れるのです。
周囲の人たちも、登る足を休めて、その瞬間を待ちかまえています。
山頂ではなく9.8合目くらいでしたが、それはもう仕方ありません。
そして、どーんとご来光。
自然と周囲から歓喜の声や拍手なんかが湧いてくるのです。
こりゃエモーショナルです。
さぁてさて、後は山頂をめざすだけ。
最後の鳥居らしきものは見えています。
こっちのはホントにホントの最後のゲートです。
疲労は最高潮。
そしてついに、山頂へ辿り着きました。
遠かったなぁ。
この頃になると、周辺で登っている人とは多少の面識があったりして、ねぎらいの言葉が飛び交ったりします。
記念写真も撮りつ撮られつ。
山頂は完全に観光地です。
土産物屋が並んでいます。
いろいろと散策を進めたいところでしたが、実はボクこの山頂に着いた瞬間からズキンズキンに頭が痛くなってしまいました。
本当に最後の鳥居を越えた瞬間くらいから堪え難いほどの頭痛です。
気が抜けたのでしょうか。
SoftBankの友達に、富士山頂から突然電話してやろうと企んでいたのですが、頭痛くて痛くてメール打つのが精一杯でした。
酸素缶も自分ではほとんど吸ってなかったのも原因の1つかもしれません。やはり一人一個あった方がよかったです。
少しは緩和されるかと期待を寄せて、山頂で酸素缶を買ってしまいました。べらぼうでしたが。
富士山の山頂には、「お鉢巡り」と呼ばれる火口をぐるり一周できるコースがあるのですが、ちょっとボクらは余力も時間もなかったのでパス。
富士山の標高3776mは、このお「鉢巡り」をすると行ける「剣が峰」という地点です。
火口を覗き込むと、なかなかスリリングな感じがありました。
さて下山。
実はこれが最高に辛かった。
ひたすら砂利道を下るということで膝がくたびれてきますし、なにしろ景色も退屈。
不思議なもんで、頭痛は下に行くにしたがって楽になってきたのですが、今度は次第に雨が降り出してきてしまいました。
本当の戦いは下山だったんじゃないかと思うくらいの過酷さです。
下れども下れども着かない中、雨は「どしゃ降り」と言えるくらいの強さになってきます。
ボクの上着は、一応ちゃんとした防水技術の使われたものだったのですが、Gore-Texではありませんでした。5合目近くに戻ってくる頃には、あまりに濡れてしまい、ついに浸水してしまいました。やはり『なんちゃって』はダメですね。
水含んで超ヘビーです。
また、靴も完全な登山用ではなく、NIKEのアウトドア用のスニーカーみたいなもので、少し古かったのですが、下山で砂利道を歩くうちにAirがパンクし、しかも加水分解まで起こしてしまい、気づいた頃にはソールが粉々。
とにかく、準備にケチったところがみんなエライことになったという感じでしょうか。
今回のツアー、5合目まで下山してロッカーのある食堂に戻ったら、名簿の自分の名前にチェックを入れるようになっていたのですが、ボクらがヘロヘロで辿り着き、そのチェックをして着替えようとしたら、すぐさま館内放送で「出発しますので集合してください」みたいなアナウンスがありました。
つまり、ボクら待ち。
もうバタバタです。
その後、バスで近所のスーパー銭湯みたいなところへ行って、入浴&休憩の時間をもらい、そして帰路についたわけです。
新宿までの車内、ヨダレ出して寝てました。
何はともあれ、こうして富士山のツアーが終りました。
ここまで思いっきり「観光ツアー」みたいな感じなのは初めてだったので、かなり新鮮で楽しかったです。
もう二度と会うことのない人々に随分と親切にしてもらいました。
これもまた富士山。
さてさて、
感動したはずのご来光も、上にある写真はイマイチでしたよね。
結論からいうと、現地のあの感じは写真にはうまいこと収められなかったというのがホントのところなのです。
ただ、その雰囲気に一番近い写真を最後にアップしておきたいと思います。
レンズが汚れていたりしますが、その瞬間はこんな感じだったのです。
モノホンは自分の目で。
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思うこと
ウチの父親も若かりし頃、それなりに名峰を目指すことを楽しみにしていた種類の人でした。ただ、富士山についてはあまり良い感想は述べません。
つまり、山人系の人からしてみれば、富士山なんてところは「ミーハー」なんだと思います。
もっと素晴らしい山がたくさんあるってことですね。
確かに富士山、雄大な景色を眺めながら登るという登山ならではのエンジョイが希薄で、何かひたすら「上へ上へ」「下へ下へ」と修練していくような感じで、やっぱり特殊な忍耐を要したような気がします。
しかし、「富士山に登ったよ」というのは、普通の人にとっては勲章です。
ミーハーであるからこそ、山人ではなく普通の人も踏み入れる可能性のあるわけですよね。
そうやって普通の人が改めて体験する「山のたしなみ」が、多くの人に何かを刻むのではないかと推測します。
天候、気温、気圧、なんてところの厳しさ、登っても登っても着かない感じからくる肉体への酷使、諦めない闘魂、同伴する人物への気遣い、知らない人との挨拶、自分で持ち込んだものへの責任、などなど様々なことが、誰に教えられるわけでもなく自分の中で確認できるのです。いや、ベタですが、つまりは山が教えてくれるのですね。
そういったことから、ボク個人的には富士山登頂とフルマラソンの2Fのうち「人生を変える度」は富士山に軍配が上がるかなという感想です。
もちろんボクらがたまたま「ご来光」を拝めたということもあるでしょうけど、仮にご来光なしでだったとしても、はたまた高山病で途中で下山しても、やっぱり何かは残るんではないかと思ったりします。