テレビ東京で「寅さん全48作大放送!」というのをやってるのを知ってますか。
秋頃からスタートして、すでに8作目まではOAしてしまいました。
優良な方々なら見続けていると思いますが、この年末年始にまたまた放送されます。
○12月31日 午後2時55分〜「男はつらいよ 柴又慕情(第9作)」
マドンナ:吉永小百合
○1月1日 午後7時〜「男はつらいよ 寅次郎夢枕(第10作)」
マドンナ:八千草薫
○1月4日 午後7時〜 「男はつらいよ 寅次郎忘れな草(第11作)」
マドンナ:浅丘ルリ子
さて、各作品の解説はまた別で紹介するとして、どうしても先に言っておきたいことがあります。
『渥美清は史上最も笑わせる役者である』
かつてボクが、いかに寅さん映画の笑いがレベルの高いもなのだということを説明しても、「おやじっぽい」「年寄り向け」などと言って興味を示さない輩が多数いました。
じゃあ何が好きか(おもしろいか)、何で笑ったのか、お尋ねてみると、「ダウンタウン」「ナイナイ」「ロンブー」「ネプチューン」などなど、さらには「スマップ」「キンキキッズ」などと答えが返ってくるわけです。
それらの意見はある部分では間違っていません。
ボクもバラエティ番組は好きなものもたくさんありますし、笑う為のものとしてそれが一般的なのだとも思っています。
が、わざわざ声を荒げて主張したのは、映画で見られる笑いという意味での貴重さをあらためて体験して欲しいのです。
例えば、見る側の満足するポイントAという笑いの到達点があった場合、映画とTVのバラエティ番組では、同じポイントAにとどく為に必要な爆発力は相当違います。
これは当然TVのバラエティの方がより小爆発で完了するのです。
バラエティ番組というものは、
主要なタレントの持ち前の喋りや動きを可能な限り束縛せず、突発的笑いに期待しつつ、大雑把な台本で進行させていっています。
つまり、番組のコンテンツのちょっとしたことで笑いに寄り道させることが可能で、見る側もあらすじには期待していないので素直に笑いへの寄り道に付き合える。
さらにここに、その主要なタレントの外敵たるゲストや素人を投入すれば、それらの目的を達成するのは容易です。
一方、映画の中での笑いというのは、
まず、ストーリー、芝居というもので不足があってはなりません。
最低限の流れを保ちつつ、笑いを生み出す必要があります。ある部分でおもしろいことがあっても、ストーリーがつまらなかったことにより評価されなくなりますし、突発的を装っていてもすべて予定調和ですので、「笑い」の為の仕掛けはより完成度を求められます。また、劇中の「おもしろい」は、「笑い」とは見なされず、興味のひとつとされてしまう傾向もあるので、「おもしろい」の発信者は映画自体にあるように思われ、個の実力がぼやけますので、なおさら難しく定義されます。
流れのある笑いという点においても非常に困難で、細切れで撮影されている場合、監督の「スタート」「カット」の中に勢いを再現しなくてはならないのです。これはクラスのおもしろ君みたいなレベルには到底こなせない難易度をほこっています。
映画の笑いは、チャンネルを変えればそれで済む問題ではなく、つまらなくても来週またやり直せるというものでもないのです。
お金を払って見に行くわけですから、「笑わせる」というふれこみで見に行って、つまらなかった場合、ボクたちは憤慨していいのです。
提供される笑いの対価として入場料が見合わないわけですから。
で、こんなことは出演する側はみんな解ってるはずです。
だから映画で笑いをやるということは、それなりの覚悟が必要で、お笑いのプロにしてみると怖いことなのです。
映画の中に芸人が出てきて、それがバラエティの姿よりもおもしろかった試しはありますか。
と言うか、はじめから笑わすことを放棄していませんか。だいたいシリアス路線で意外性ぶるものですよ。
先述したバラエティ番組の鑑賞環境では、見る側もかなりのレベルでのリラックス状態にあるものなのです。
パジャマで寝ころんで見てていいのです。
もし他に一緒見る人がいるとしても、それはかなり親しい間柄の人でしょう。
人間は知らない人の前では、感情を押し殺そうとするところがあります。不特定多数が集まる映画館では、たとえ暗がりの中といえども、相当おもしろくなければ笑い出さないものなのです。
しかし、渥美清は違います。
「男はつらいよ」を映画館で見たことがあるのですが、その空間はすごいことになっていました。
ほとんどの人間が寅さんに好意的な目を注ぎ、心のベクトルは確実に「笑い」に向かっているのです。
そして、ビデオなどで見た際にはたいして笑わなかった場面も、民衆の愛のある大爆笑につられて笑ってしまうのです。
テレビのバラエティ番組で、観客の笑い声やスタッフの笑い声を入れてあったりしますね。
あれが「ここで笑え」の「サイン」なんですが、寅さん映画ではそれを仕込みなしでリアルにやってのけるのです。
テレビから人を笑わせる芸人は今もたくさんいますし、これからもたくさん出るでしょう。
(第一、テレビ上の笑いはブームですから)
しかし、渥美清ほど芝居で笑わせる人間はおそらく出てこないでしょう。
そんな寅さん映画がただで見られるんですよ。
見なくていいんですか?
あとで見たくなっても48作もあるとレンタル代大変ですよ。
余談ですが、
渥美清以外でボクが唯一認めている一流の笑い生産者は、イッセー尾形です。
あの人も最高です。
渥美清が亡くなった後、出てきた話なんですけど、渥美清は何度もイッセー尾形のひとり芝居をこっそり一人で見に来てたらしく、大勢の観客の中で一人だけ笑わないで見てたんだそうです。
もしかしたら、嫉妬だったのかもしれません。
そんな縁から寅さんの映画にもイッセー尾形は何度か出たことがあるんですが、イマイチかみ合いませんでした。
(イッセー尾形は誰かと一緒だと味がでないことが多い)
でも自分の好きな2人が交流があったことが嬉しかった記憶があります。